#09 ホームページの値段
前田 大地
ホームページの費用対効果は、制作料金で判断できないからややこしい。
全く別の商品が売られている
あなたがスーパーで「冷凍餃子」を買うのなら話は早い。そう、いちばん安いところで買えばいい。でも、ホームページの場合はちょっと事情が異なる。そもそも「ホームページ」という決まった商品は存在しない。皆がホームページと呼ぶ、名前が同じだけの全く違う商品がそれぞれの制作会社で売られているのだ。
だから同じ100万円のホームページでも、実際に手に入るホームページは全く違うものになる。30万円のホームページと100万円のホームページでどちらが優れているかも、値段だけでは分からない。
値段と成果は比例しない
ホームページの制作料金は、そのほとんどが人件費だ。専門的な技能を持つ人間が数週間から数ヶ月の期間をかけて作る。そこには当然、人件費が発生する。たいていの場合、制作にかけられる手間や労力は、制作費に比例する。
「自動車」だったら、軽自動車だろうが高級車だろうが最低限の「移動」はできる。でも、ホームページは、買う相手を間違えるといくら値段が高くても何の役にも立たないどころかマイナスの影響を及ぼす場合すらある。
「値段=成果」という図式が成立しないため、依頼する側としては非常にやっかいなのだ。
制作側の手間を削れば価格も下がる
制作費の大半が人件費のため、制作する側の手間が減れば、料金は安くなる。いわゆる格安の制作会社は、あらかじめ用意されたテンプレート(ひな形)を使用することで低価格を実現している。
「テンプレート」と言うと表面上のデザインを想像すると思うが、何もデザインに限ったものではない。ホームページの「コンテンツ」や「ページ構成」なども、テンプレート化されていることが多い。
例えば、美容室のホームページなら、「コンセプト」「メニュー」「スタッフ」「アクセスマップ」というページをあらかじめ用意しておく。美容室から依頼が来た際、それをそのまま提案することで、制作会社は企画設計にかかる時間とコストを削減する。
しかし、注意しなければいけない。ホームページ本来の目的やターゲットがきちんと議論されないまま制作が進み、しかも原稿や写真まで自分たちで用意しなければならないので、成果は依頼者側の努力に100%かかっている。
デザインだけオーダーメイド?
格安のテンプレート制作に対抗して、低価格でしかもデザインをオーダーメイドしてくれる制作会社も存在する。しかし、よく考えてみてほしい。デザインとは、企画設計段階を経て最終的に作られるアウトプットだ。そのため、いくらデザインだけオーダーメイドしても、そこに至るまでの戦略が抜けているのでは意味がない。デザインだけオーダーメイドしても、成果との関連性は薄いのだ。
そもそも戦略がないため、依頼した側もデザインの好みでしか良し悪しを判断できなくなる。作る側も「テイストの違うデザインを3パターン作ったので好きなやつ選んでください」なんて無責任なことを言い出すようになる。
社内に制作会社を適切にコントロールできるような専門家がいない場合は、戦略段階からきちんと提案してくれる制作会社を選んだほうが、結果として費用対効果が高くなるケースが多いのもうなずける。
料金に相場はない
結局のところ、ホームページ制作料金に絶対的な相場はない。いくつもの制作会社に話を聞き、見積もりを取り、相対的に判断するしかないのが現実だ。そして「誰に制作を依頼するか」こそが、費用対効果を高める最も重要なファクターとなる。