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自我を捨ててコンバージョンを手にしたリニューアルの話

前田 大地

突然ですが、【自我】は本当に困ったやつです。

ホームページだけに限らないと思うのですが、「企業が言いたいこと」と「ユーザが知りたいこと」にはミスマッチが存在します。ユーザに伝える必要がないこと。むしろ、伝えてもしょうがないこと。なのに、言わずにはいられないこと。こだわり、プライド、信念、哲学、いろいろあるかと思いますが、そういうものを私は【自我】と呼んでいます。

本来の自我は、その企業のブランドを形成するひとつの要素であって、「なんかよくわかんないけど生き様がかっこいい!」みたいなプラス要因でもあります。しかし、いわゆる「エゴ」としての【自我】は、客観的な視点を妨害して思考をかき乱すやっかいなやつでもあります。

私はクライアントのホームページを作るとき、「ユーザ視点」で考えることを第一にしています。例えば、製品の特長を聞いたとき「それはユーザにとってどんなメリットがあるのだろう」と考え、文章を書くとき「ユーザにとっていちばん重要なことは何だろう」と考えます。とくに【自我】を意識することなく、ユーザに必要かどうかで判断します。

私を含めプロは、日々、物事をユーザ視点から見る訓練をしています。ですが、我々がクライアント企業をユーザ視点から見ることのできるいちばん大きな理由は、「そもそも外部の人間だから」です。冷静に外から見ている側の人間なので、客観的に考えられるのは当たり前なんです。

私たちは、企業の内情を知らないから、客観的に考えることができます。

つまりその理屈だと、私たち制作者がいちばん客観的に企業を見られるのは最初のヒアリング時です。実際に私も、最初のインスピレーションを最も重視するようにしています。ですが、打ち合わせを重ねて内情を知れば知るほど、だんだん客観的に考えることが難しくなっていきます。それでも、やっぱりそこは外部の人間ですから、なんだかんだで客観的な判断ができてしまうんです。日頃から訓練もしてますしね。

そんな私たちが、客観的に見ることができずに苦しむときがあります。それは、「自分たちのビジネスについて考えるとき」です。

どうして客観的に見られないかと言うと、これまた「中の人間だから」です。自分たちと他社の違う点だったり、サービスの誇りたくなる特長だったり、どれだけ顧客のことを考えているかだとか、専門的な技術力の高さだとか、職人的なこだわりだとか、とにかくもう言いたいことが溢れ出してくるんです。ユーザにとって必要のないものまで。そう、例の【自我】がユーザ視点になることを許してくれません。

事実、セブンシックスのホームページも、気づかないうちに【自我】に侵食されていました。

セブンシックスのホームページは、非常に短いスパンでリニューアルを繰り返しています。というのも、リニューアルには「実験」的な意味合いも含まれておりまして、毎回テーマを決めて「こうしたら、どうなるんだろう?」という独自のノウハウを蓄積する場になっていたからです。しかし、リニューアルを重ねる過程で、ブラッシュアップのつもりが少しずつ【自我】が大きくなり、いつのまにかユーザ視点からかけ離れたコンテンツが台頭していたのです。

ただの実験だったら「よし、失敗か。でも良いデータが取れたぞ!」なんて思うのかもしれません。でも、セブンシックスは違います。営業マンを雇ったりせず、ホームページからの集客に100%依存しているため、問い合わせの増減が直接売上に響くのです。これも「ホームページを作る側の人間がホームページから集客できなかったら本末転倒だ!」という【自我】ですね、はい。

というわけで、今回は「ユーザ視点を徹底する」というテーマで8回目のリニューアルを行いました。

セブンシックスのホームページに与えられた役割はいたってシンプルです。「ホームページを作ろうと考えている企業の担当者から問い合わせをもらう」こと。ですから、ユーザ視点で問い合わせまでの流れを作ることだけに専念しました。そして、問い合わせへのルートから外れたコンテンツを一切合切まとめて切り捨てました。

専門知識を有した同業者にしか理解できないようなこだわりを掲載するなんてもってのほか!問い合わせの最短ルートから外れたコンテンツは容赦なく削除していきます。普通に考えたら残しておくべき「サービスの細かい仕様」や「制作の流れ」などもルートから外れたので思い切って削除しました。おお、だんだん実験ぽくなってきましたね。

そうなると【自我】の入り込む余地はありません。ただ心情的にはちょっと物足りない感はありまして、私が職人気質なのもあるかもしれませんが、やっぱり自分たちのサービスについてもっと詳しく解説したいなーとも思うわけです。ということで、今、私の【自我】を、こうしてブログ記事にして発散してみました。本流は完全なるユーザ視点にしておいて、【自我】の発散はブログ記事でやる。なるほど、そんな棲み分けもなかなか良いかもしれません。ハッピネスイズアウォームガン!Yes, it is!

ちなみに、今回のリニューアルの結果ですが、結論から言えば「今のところ成功」です。まだ十分なデータは取れていないのですが、リニューアル直後から大幅なコンバージョンの向上を感じています。前回のリニューアルが失敗だったこともありますが、おそらく最低でも200%はアップするのではという勢いです。まだまだ改善の余地はありますが、やはり「ユーザ視点」は強かった、ということですね。

Web Designer / Developer

前田 大地

沼津高専中退。デザイン会社、システム開発会社を経てセブンシックスを設立。マーケティング、デザイン、テクノロジーに精通するオールラウンダーとして、県内の中小企業に向けた戦略型ホームページ制作を開始。一方で、都内の広告代理店からの要請で大企業案件にも多数参加。企業が本当に必要とするホームページ制作とは何か、を日々探求している。

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