直帰率とコンバージョンをめぐるメインビジュアルの攻防戦
前田 大地
セブンシックスのウェブサイトは、設立時から度重なるリニューアルを行っており、マイナーチェンジを含めると改修回数は100を軽く超えています。
2020年2月現在のホームページは、昨年の夏にフルリニューアルしたもので、バージョン9にあたります。
Google Optimizeを導入してABテストを繰り返しながら今に至るワケですが、とりわけトップページのメインビジュアル画像はかなりの回数差し替わっています。
今回は、そんなメインビジュアルをめぐる苦悩と攻防戦のお話です。
猫、降臨する
バージョン9にフルリニューアルしたとき、最初のメインビジュアルは「猫」でした。
なぜ、ウェブ制作なのに猫なのか。
なぜなら、Adobe XDを使ってせっせとワイヤーフレームを作った北斗が、最初に私に提出した段階で猫の写真を当て込んでいたからです。そうです、彼は「すべてのウェブサイトのトップページが猫になれば世界は平和」という危険な思想の持ち主です。さすがに製造業のクライアントさんのトップに猫を使ったら怒られるので、それならばと自社サイトにぶち込んできました。
子供と動物。
それは、アイデアに詰まったときに使えばある一定の効果が期待できるという広告業界では禁断の裏技だと耳にしたことがあります。確かに、ウェブと何ら接点のないこの画像ですが、当てはめてみるとなかなか良い印象を与えてくれます。
刷り込みというのは怖いもので、私のほうでデザインを作成する段階になったとき、他のどんな画像を当てはめてみても、「なんか違う・・・」となってしまい、代替案がないまま初期案の「猫」で公開するに至ったのです。
そしてこれが、悲劇の始まりでした。
猫、結果を出す
猫のメインビジュアルでサイトを公開すると、なんと立て続けにホームページ制作の問い合わせが入りました。
冷静に考えれば、サイト全体をリニューアルしたことで問い合わせが増えたと考えるのが妥当です。ですが、猫の画像のまま公開してしまった罪悪感が私の頭にあったため、自分を正当化させるために「これは猫の手柄なのだ」と、自分を納得させるしかありませんでした。
しかし、私は犬派です。あいつを野放しにはしておけません。
少女、猫に敗れる
リニューアル後のコンテンツ改修が落ち着いたので、ようやくメインビジュアルに絞ったABテストを行うことにしました。
猫のパターンと、もうひとつ別のパターンを用意して、どちらが優れているかをGoogleさんに分析してもらうのです。
早速、私は打倒猫のための刺客を送り込むことにしました。
最初の刺客は、「スマホを操る少女」です。スマホを登場させることによって、私の心情的にも「ウェブ寄りな画像を使った感」がグッと高まります。
しかし、結果は、惨敗。
直帰率も、コンバージョン率も、猫には及びません。
そもそも小さな子どもにスマホを与えるのはいかがなものか、という私の心の声が聞こえてくるようなこないような何とも言えない気持ちになりました。
魔王、無双する
その後も、猫を倒すため、Adobe Stockから勇者たちが続々と召喚されました。しかし、どの勇者も善戦はするものの魔王猫には届きません。Adobe Stockのアセット残高はみるみる減っていきます。
「くっ、しかたがない、あやつを召喚せよ!」
「なりません!王様!奴は危険すぎます」
「ええい、ならばそなたが猫の相手をするとでも言うのか!」
「そ、それは、、、。む、無念ですが、致し方ありません」
脳内で茶番が再生され、私は奥の手を出すしかありませんでした。それは・・・バージョン8以前で使用していた狼の画像です。なんという二番煎じ!それでも、なりふりなどかまっていられません。私は、犬派なのです。
しかし、結果は、惨敗。
穴があったら入りたい。というのはまさにこのことです。良いアイデアがないからといって過去の栄光にすがり、そのうえ結果も出せないのですから、いくら魔王から民を守るためだとはいえ王様失格です。
王は民となり初心に返る
王の座を奪われた私は、長い幽閉期間を経て初心に返りました。そして、猫とか犬とかは一旦忘れて、現状を打開する目的達成のためのアイデアをちゃんと考えることにしたのです。そして、ひとつの答えにたどり着きました。
自分たちで作ったウェブサイトを並べよう。
そう。それが、WEB制作業っぽさとカッコよさとコンバージョンをすべて手に入れる最善の方法でした。しかも、すでに制作実績はWordPressで管理されています。それらの画像を呼び出すようなプログラムを書いておけば、管理画面から制作実績を登録するだけで、自動的にトップのメインビジュアルにもサイトのサムネが掲載される仕組みが作れます。
そして伝説へ
猫の魔王を倒したのは、私たち自身がこれまでに手掛けた制作実績という名の勇者でした。手を抜かずにひとつひとつ一生懸命作って良かった。雨の日も、風の日も、GWも、お盆も、年末年始も、頑張って良かった。
「ひとりぼっちじゃないよ」
振り返るとそこには、北斗がいました。私は涙を拭って飛竜にまたがり、チョコボに乗る彼を追いかけていくのでした。
……
……
……なんだ、これ。